一般的にHIV(後天性免疫不全症候群)という病気を聞いたことがある人も多くいると思います。また、HIVイコール不治の病で近寄りがたいイメージを持っている人も多くいます。
しかし、この病気を正しく理解している人は世の中にどのくらいいるか疑問であり、正しくHIVを理解し人と接していくことは非常に大切なことであります。
HIVはもともとヒト免疫不全ウイルスに感染することで引き起こされ、HIVに感染した後は適切な治療を受けないと自己免疫力の低下が見られ、健康な状態を維持出来なくなることが一番の問題として挙げられます。
HIV感染とAIDSの違いを認識することが、エイズを理解する最大の近道です。
HIVは性病などと違って、感染したからといってすぐに症状が出るわけでもなく、近年わが国では、困ったことにHIVに感染したことに気付かない人々増加しており、10年くらいしてからいきなりエイズを発症して病院を受診する人が多くなっています。
HIVに感染したらどうなるの?
HIVに感染すると自己免疫の低下が見られ簡単に病気にかかりやすくなります。
簡単な感染症の風邪や日和見感染症を発症したり悪性疾患を引き起こしたりします。
この状態はエイズと呼ばれ一般社会では不治の病として恐れられていました。
しかし、HIVの治療に関しては治療方法や薬品について日々進歩しており、HIVに感染したとしてもエイズを発症しないようにコントロールすることは、以前に比べ容易になってきています。
しかし近年に日本においてのHIV新規感染者数とエイズ患者数は、減ることはなくむしろここ数年は下げ止まりとなり横ばいの状況が続いています。
都市部ではこの状況を社会問題ととらえ都市部を中心に若者や同性愛者にコンドームの使用を呼びかけるイベントが開催されています。
HIV感染者の多くは男性であり、よりリアルな感覚を求める性行為を行うことが原因となっており、なお一層の啓蒙活動や治療が必要とされています。
HIV感染のメカニズム
HIVはいわゆるエイズを引き起こすウイルスで、コンドームなどを使用しない直接的な性交渉や覚せい剤や麻薬注射の回し打ち、輸血等で感染することが知られています。
しかし、一般的知識としてHIVに感染したらすぐにエイズになという誤った認識があることがいなめません。
HIVはまずCD4というマーカーを持つリンパ球に感染し、HIVウイルスとリンパ球がせめぎ合い戦っている間が約10年(個人差有り)ほどあり感染初期の2週間くらい(風邪症状やリンパ節の腫れ)以外は主だった症状が見られることはありません。
その潜伏期間を過ぎるとCD4というリンパ球がウイルスとの戦いに敗れ数が減少し、リンパ球が外敵(ウイルスや細菌、カビなど)から身を守ることが出来なくなり多くの感染症や腫瘍を引き起こします。
最終的にこの状態になり体の不調を訴え病院受診する人が多くこの状態をエイズと呼んでいます。
アメリカや日本を始めとする先進国では、HIVウイルスを抑制する新たな新薬や治療方法が発達普及してきており、HIVに感染してもウイルス量を抑える(ウイルスを死滅させるわけではない)ことが出来るようになってきており、エイズとして発症する人は減少してきています。
しかし、アフリカや東南アジアを始め発展途上国では治療や薬の不足や金銭的問題で治療の遅れや、未治療などで感染者はいずれエイズを発症することは避けられていないのも現状です。
HIV感染したら潜伏期間はあるの?発症した時のその症状は?
HIVに感染したとしたら誰もが気になるのが潜伏期間がどれくらいあるのかということです。
HIVに感染しエイズを発症するまでには、感染から発症までを段階があります。急性期→無症候性キャリア期→エイズ期というように経過をたどります。
急性期
HIVに感染すると人体に感染後2週間目から4週間目頃に身体的症状が現れます。
体内に入ったHIVウイルスは急激に体内で増殖し、CD4陽性リンパ球とせめぎ合いが行われCD4陽性リンパ球が破壊されていきます。
急性期には免疫力低下のため発熱、のどの痛み、だるさ、下痢など、風邪やインフルエンザに似た症状が見られ、筋肉痛や皮疹などが出る場合もありますが、いずれも数日から数週間で症状は改善することにより、風邪などとにているため症状が見過ごされてしまうことがあります。
無症候性キャリア期
急性期を過ぎ体に症状が現れ一時的に改善が見られると、無症候性キャリア期へ移行します。
個人差もありますがこれは何も症状の出ない時期が数年から10年程度続き何の違和感もなく生活することができます。
人によって15年以上経っても症状が全く症状がでない人もいれば、感染から数年程度でエイズを発症する人もいます。
無症候性キャリア期の恐ろしいところは、症状が出ないことは勿論のことですがHIVの検査を受けない限り自分ではHIVに感染していることが分からないことにあります。
また、自分に悪意がなかったとしても病気の存在に気付かず、他人に病気をうつしてしまうことが考えられます。
症状がでないとはいえ体内では症状が進行し、HIVが増殖を続けておりCD4陽性リンパ球数の低下により免疫力は徐々に低下していきます。
症状がある程度まで進行し免疫力が低下すると、原因不明の症状である寝汗や長期に続く下痢、急激な体重減少などの症状出現し、帯状疱疹や口腔カンジダ症などの病気にかかりやすくなります。
エイズ期
検査や治療を受けないまま自然に経過した場合、免疫力の低下により普段健康な状態では感染しないような病原体である日和見感染症や悪性腫瘍、神経障害などの様々な病気に簡単に感染するようになります。
エイズ期とは厚生労働省がエイズ診断基準として23個の疾患を指定していることから、発症した病気が合致した場合エイズ期と診断されることになります。
HIVの感染は検査だけで分かるの?その方法は?
HIVの検査は非常に大切です。検査の大切さを誰しも十分理解していることと思いますが、検査を早期にして早期治療することがとても大切になってきます。
なぜならHIVは、早期に適切治療を行うことで健康を回復・維持できるようになってきています。
また、日本では、1日に4人程度の人が新たに感染しているといわれており、自分が病気を早期に認知し感染を拡大させないことも必要になってきます。HIVは感染しても発症を長期に抑えることにより普段と変わらぬ生活を送ることができます。
検査の方法にはいくつかあり、保健所や病院で検査する方法から自宅で郵送により完全な匿名でできるHIV/エイズ検査キットSTDチェッカーを利用し検査することが出来ます。
HIV検査はどこで受けられるの?
HIV検査は全国のほとんどの保健所や自治体の特設検査施設(東京都南新宿検査など)で、無料でしかも匿名で受けることができ自分の居住地以外の保健所でも検査は受けられます。
医療機関はHIV検査を希望すれば受けることができますが有料となるため特にも若年者は無料の保健所などで受診することをおすすめします。
HIV感染したらすぐ検査して大丈夫?検査の時期は?
HIVにはウインドウ期間というのがあり、HIVの感染初期には血液検査では陰性となる場合があり、感染していることが検査では分らない時期があります。
この期間を「ウインドウ期といいHIVに感染すると、通常4週間から1か月前後で血液中にHIVに対する抗体ができ検出されるようになります。感染から4週間以内に検査した場合は感染していても陰性となる可能性がありますが焦るあまり検査が有効でない時期があるので注意が必要です
HIV検査では、保健所等によりスクリーニング検査で陽性の場合、引き続き確認検査も実施して確定結果を1から2週間後に通知する「通常検査」と、スクリーニング検査で陰性であった場合、検査日の即日に通知する「即日検査」とがあり、検査施設によって実施している検査が違いますので、事前に検査施設に確認することをおすすめします。
か一度その結果を医師からお伝えしてから、陽性の場合は再度確認検査を行なう方法が主です。
自分の受け取った検査結果が「陽性」の場合は、それがスクリーニング検査結果なのか、確認検査結果なのかを確認が必要です。
検査はいつ受けられるの?予約は必要?
保健所等の無料匿名検査施設では、検査施設によって検査日時が異なるので検査施設に確認が必要です。頻繁には検査を行っていないため急いで検査を希望している方は、有料になりますが医療機関をおすすめします。また、夜間や土曜日・日曜日に検査を行っている検査施設もあり、また予約が不要の検査施設もありますが事前に確認をとることによりスムーズな検査が行えます。
どんなときにHIV検査を受けたらよい?
HIVと聞くと、性行為自体に不安を持たれる人も多くいますが、不特定多数のパートナーやコンドームを用いない性行為をしたりしている人は、やはりリスクが高いといえます。
HIVに感染したかもと不安に思った時は、確実に検査を受け現実逃避しないことが大切であり、日頃からのリスク軽減もは重要になります。
HIV感染はHIV検査を受けないと見つけることはできず、発症するまで症状が分かりにくいことも多く、検査する意味は十分にあります。自分の身を守るとともに大切な人を守るためにも不安を感じたら検査をおすすめします。
HIVの感染経路や原因は?
HIVに感染する原因は、性行為による感染、覚せい剤の注射器の使いまわしなどによる血液を介する感染、母体や母乳などを介する母子感染、非加熱製剤による感染など様々なことが原因や感染経路となります。
しかし、入浴やプールによる水を介しての感染することや日常生活のなかで感染することはほとんどないため極度に心配をすることはなく、体液や血液などに触れる場合があれば注意が必要です。
感染経路のうち、日本でもっとも多くみられるのは性行為による感染で、母児感染については、感染予防策を講じなければ30%ほどの確率で母親か子供に感染すると言われており、輸血による感染は、過去数例が報告され献血でのスクリーニング検査の感度も向上していますが、現時点では100%防止できるわけではありません。
HIV感染接触時間は関係ある?感染は傷口、空気感染しますか?
HIVウイルス保持者への接触機会や時間については、接触回数や時間が多ければ多いほどリスクが当然高くなります。傷口や粘膜など直接的な接触が非常に高いリスクがあります。
しかし、前述で記載したとおり空気感染することはないため適度な自分自身の防衛に努めるべきであり、誤った考えを広げてしまわないことが大切です。
HIVにうつるなど感染確率はどれくらいなの?
HIV感染について調べてみると気になるのがどのくらいの感染率があるのかということです。
これまで記述してきたとおり性行為で1回直接触れたから必ず感染するということではなく、そのリスクある行為を繰り返し行っていればリスクも高まるのは事実です。
世界保健機関のHIVウイルスの感染経路調査によると、HIV感染の7割から8割は性行為によるものであり、5%から10%は母子感染及び薬物使用時の注射器の再利用、3%から5%が輸血などとなっておりHIVの感染防止には性行為での感染防止が一番有効な手立てとなっています。
HIV感染のまとめ
これまでHIVウイルス感染の症状や感染経路、検査方法について述べてきましたが、HIVウイルスに対する不安は多くの人の問題であり心配事ごとでもあります。しかしなが自分自身がHIVウイルスについてしっかりした知識をもち対処することで多くの場合ウイルスから自分の身を守ることが出来ます。また、人には言いにくい悩みでもあり多くの人にHIVの特性を知ってもらうことにより、より安全な生活をおくることができます。勇気をもって検査することは人として十分に意味のあることで、同じ境遇の人がいれば是非とも検査をすすめてあげてください。